一般社団法人日光青年会議所
2023年度 理事長所信
理事長 八木澤 統隆
【はじめに】
――わたしたちはいま、真価を問われている――
2022年2月24日、世界に衝撃が走りました。ウクライナへのロシアの軍事進攻は無辜の市民を巻き込む戦争となったのです。これにより世界は名実ともに不安定化し、異常気象や長引く新型コロナウイルス感染症も相まって、これまでの日常とは違う新たな時代に突入しました。不安定で予測不可能な社会で、わたしたち青年会議所はどのようにして“組織としての自信を持ち続け”、“他者から頼られる組織となれるのか”。
われわれ青年会議所もいま真価を問われています。
これまでも不安定で予測困難な時代に、志高く立ち上がった青年たちがいました。いつの時代にも変革に情熱を傾けた青年たちがいました。
刻一刻と変化する時代に、まちの未来を革新していくことが、これまでも、これからも青年に与えられた使命だと考え、青年会議所の運動を再定義する新たなる一年とすることを宣言します。
われわれ青年会議所は、いつの時代も明るい豊かな社会の実現のために走り続けてきました。では、そのためにいったい何をしてきたのでしょうか。
それはイノベーションです。
イノベーションとはわれわれの活動を通じて、利用可能な資源や価値を効果的に組み合わせることで、これまでにない、またはこれまでより大きく改善された価値を創出・創造し、社会に変化をもたらすことです。これまで多くの先輩や同志がこのまちで、この国で、世界で走り続けてきたのをわたしたちは知っています。
このイノベーションの源泉とは何だったのでしょうか。
それは情熱であったと確信しています。
まちを良くしたい、未来を良くしたいと想う情熱こそが新たなる価値を生み出す最大の源泉になります。
そうです。青年会議所は情熱が集まる場所なのです。
だからこそこれからも日光青年会議所はメンバー一人ひとりの情熱で、イノベーションを興し続けようじゃありませんか。
【共感できる組織へ】
わたしたちが発信する力強い熱量を下支えする根幹は組織力にあります。しかし、コロナ禍も災いしてか、コミュニケーション不足や相互理解の場が乏しくなっている近年では、良い組織の在り方にも変化がおきています。組織力を盤石にするためには、自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言でき、異なる個性が笑顔でぶつかり合い、共存できる柔軟性のある組織であることが不可欠です。
わたしたちの社会を革新していく事業は、多くの時間と議論を積み重ねた結晶です。その熱量を多くの市民の皆さまに伝えるためにも、ひとつの情熱ストーリーとして事業構築の過程も発信してまいります。
【国際観光文化都市としての価値を高める】
現在、日本は人口減少の波に呑まれ、これまでの仕組みでは立ち行かなくなるのは見るに明らかです。ますます高齢化は進み、介護や医療費といった社会保障費が膨らみ続けると、生産年齢の社会保険料負担は増加せざるを得ません。さらには、加速し続ける円安や輸入依存における物価上昇により、労働者における実質賃金は増加しません。日光市も少子高齢化、空き家の増加、企業における後継者不足、限界集落における生活インフラの維持など、課題を上げればキリがありません。しかし、内なる課題も国際観光文化都市としての長所をさらに伸ばすことで解決の糸口が開かれます。新型コロナウイルスによる影響も徐々に薄れ、日本への入国規制が緩和され、以前のように外国人観光客が訪れてくるでしょう。
我がまち日光市は広大な面積を有し、二社一寺、日光国立公園、温泉をはじめ歴史建造物や自然など豊かな観光資源が点在しており、日本の観光地の中でも恵まれた環境にありますが、国際観光文化都市として“また日光に来たい”と思わせる価値をさらに追求することができます。このまちがどういう未来で在りたいのか、在りたい姿を探し、未来へのイノベーションを怠ってはならないのです。
【子育てのまちNIKKOへ】
全国的に少子化の課題は明らかなものの、まだまだ子どもを産み育てる環境や支援、優遇などが行き届いていない現状があります。JCI日本では、子育て世代が子どもを“生み育てたくなる”社会を実現するためのベビーファースト運動を推進しており、企業や個人、行政が、みんなで赤ちゃんを育んでいく優しい社会を目指す運動をしております。わたし自身、昨年に子どもが産まれ、子どもから幸せな気持ちをもらいますが、子育ての大変さも痛感しております。子どもを抱いていると地域の方から「かわいいね」と声をかけていただくことがあり、その一言で報われた気持ちになります。子育てをする親にとっては、何気ない一言が励みになるのです。精神的なソフト面と機能的なハード面での子育てしやすいまちを育んでいきましょう。
青年会議所は元来、青少年への育成事業をおこなってきましたが、この少子化が進行していけば、青少年への事業も立ち行かなくなります。われわれ子育て世代にとって“これからこのまちで子どもを産み育てたい”という人を増やすための議論が必要です。その結果に生まれた共感は、きっとわたしたちのまちの未来の在り方を示してくれるはずです。子どもには人を笑顔にする不思議な力があり、地域に子どもが増えれば笑顔が溢れます。この笑顔を増やすためにも、われわれは多子社会の実現へ向けて運動をおこなわなければなりません。
【リーダーとしての義務】
わたしは日本青年会議所が主宰するグローバルリーダー育成塾に入塾しました。そこではわたしのこれまでの知識、知見を大きく覆され、そこから知識欲が旺盛になりました。やらされる勉強ではなく、自らが知りたいと思う知的好奇心こそが、自らを強くし、未来を切り拓けるリーダーをつくり上げると確信します。
リーダーとしての役目は自らが行動し、人々をマインドシフトすることです。世の中ではいま、生産活動におけるゲームチェンジがおこなわれ、その動きはコロナ禍により一層加速しています。そのためにも常に最新で価値の高い一次情報を取り入れる必要があり、それがまちや会社に一見関係なさそうな情報であっても世の中のトレンド、マーケットや仕組みを知っているのと知らないのでは大きな差を生みます。
われわれがより良いまちを創っていく、秀でた人材や企業であるために、最新の情報にアンテナを張り、知識をアップデートし、ちょっと背伸びをして視座を高めていきましょう。
【GX(グリーントランスフォーメーション)にチャンスあり】
昨今、地球温暖化、環境破壊、自然災害、エネルギー問題、SDGsに関連して脱炭素化が世界中から求められ、日本政府は2050年カーボンニュートラルを宣言しました。それらを達成するための手法としてGXできるかが鍵を握ります。日光市は水資源、地熱資源、森林資源が豊富にあるにもかかわらず、そのポテンシャルを活かしきれておりません。すでに世界中では、多くのグリーンテック企業が勃興しており、これからの世の中を制するのはグリーンビジネスだと確信します。国際親善に果たす役割を大きく期待されている国際観光文化都市として、我が日光市が環境先進地域の牽引役となるために日光青年会議所は積極的に推進してまいります。
国際連合が掲げる持続可能な開発目標、MDGsがSDGsとなり国家や一部の大企業、投資家のあいだで拡がりを見せているものの、中小企業や個人も積極的に取り組むことで世界全体の課題を加速度的に解決していかなくてはいけません。SDGsを活用し、付加価値を高められる商品やサービスを開発することが持続可能な課題解決となります。
【価値ある組織の意地】
われわれ青年会議所は年々、会員数が逼迫している状況にあります。会員が減少すれば、おこなえる事業、影響力、発信力などの低下が余儀なくされるでしょう。しかし、この価値ある組織を縮小させるわけにはいきません。このまちで生きていこうと決め、このまちを良くしたいと考え、志を同じくする未だ見ぬ仲間はこのまちにまだまだたくさんいるのです。一緒に英知と勇気と情熱を持って、この日光青年会議所でイノベーションを興していこうじゃありませんか。
【結びに】
わたしは木材製材業をしており、常にチャレンジし続けてきました。木材に何を掛け合わせれば価値が高められるか、どうすれば新しいものを創出できるか。これらを考える際、わたしはこれまで青年会議所で学んできたこと、経験してきたことがとても大きな軸になっていることを感じています。
わたしが革新することで、会社が変わる。その意味でメンバー一人ひとりが少しでも革新することで、組織が変わり、まちが変わっていく。この青年会議所に集いし仲間たちがわたしも含めて成長し、小さくても、少しずつでも、着実にイノベーションを興し、会社を、まちをみんなで発展させていきたいのです。
――日光青年会議所がいつの時代でも、情熱をかたむけられる場所であり続けるために――